しらぬひの 筑紫の綿は 身につけて いまだは著(き)ねど 暖かに見ゆ(巻3-336)
作者: 沙弥満誓(しゃみ まんせい)
訳: 筑紫の絹の真綿は、まだ身に着けて着てみたことはないけれど、見るからに暖かそうであるよ。
備考: 「絹の真綿」は筑紫国の特産品として有名でした。これは海外との交易品として大変珍重され、新羅の貴族が求めたことを記す文書なども残されています。これが大陸に渡り、一部はシルクロード交易にも用いられたことが想像されます。
作者は、観世音寺の造営責任者として、723年に都から派遣されていた沙弥(僧)です。もとの名を笠麻呂(かさのまろ)といい、木曽路を開通させ、また美濃国や尾張国の長官(守)だったことで知られています。