右:凡(おほ)ならば かもかもせむを 恐みと 振りたき袖を 忍びてあるかも(巻6-965)
作者: 娘子 児島(むすめご、こじま)
訳: いつもなら袖をふってお別れするところを、おそれ多い方なので、振りたい袖もがまんしているのです。
左:ますらをと 思へるわれや 水くきの 水城のうえに なみだ拭はむ(巻6-968)
作者: 大伴旅人(おおとも の たびと)
訳: 立派な男子だと思っていた私であったが、別れとなると、この水城の上で涙を拭うことだろうよ。
? 備考: 大納言に昇進し、大宰府を去る大伴旅人と児島との別れの場面です。
万葉集はその場所を水城と記しており、大宰府の出入口としての水城の役割がうかがわれます。