西の都・太宰府の歴史を深く掘り下げる充実のコースをご紹介します。まずはじめに、この街の象徴ともいえる太宰府天満宮を参拝します。ゆっくり時間をかけて広い境内を巡ったあとは、九州国立博物館を見学。太宰府を含む日本と海外との文化交流の歴史を、特色ある展示で俯瞰することができます。次に訪れる大宰府政庁跡では、いにしえの都が醸し出す雄大なロマンを感じることができるでしょう。最後は、西の都・大宰府への訪問客が必ず通ったであろう水城跡へ。太宰府の正門ともいうべき城砦を散策し、悠久の歴史に思いを馳せてみてください。
太宰府天満宮は10世紀に創建されました。ここに祀られる神を天神といい、9世紀に活躍した学者であり政治家としての手腕も発揮した菅原道真公が、天神として崇敬されています。道真公は京都で右大臣となったものの、藤原氏の陰謀によって失脚し、大宰府に左遷され、不名誉のうちにその生涯を閉じました。
京都から追従した門弟の味酒安行(うまさけのやすゆき)が今の地に御遺骸を葬り、祠廟(しびょう)いわゆる御墓所を創建したのが太宰府天満宮の起源であり、1100年以上の歴史があります。桃山時代の豪壮華麗な様式を伝える現在の御本殿は1591年に再建されたもので、国の重要文化財に指定されています。秀逸な才能と最後まで誠心を尽くした生涯を讃えられた道真公への崇敬は学者や政治家だけにとどまらず、禅宗の僧、寺小屋の子供たちなど幅広い層にまでおよび、文道の祖また至誠の神としての信仰が広がりました。現代においても学問・文化芸術・至誠・厄除けの神としても慕われ、国内外より多くの参拝者が訪れています。
"当初、天神は災難除けの神とされましたが、1700年代以降は、学問の神様としてその名を知らしめるようになりました。今日では、とくに受験シーズンになると、学生とその家族が多数、参拝に訪れています。
境内を散策する途中で、ぜひとも宝物殿に立ち寄ってみてください。菅原道真公の刀や古文書など、重要文化財の数々が展示されています。とくに貴重なのは、10世紀に編纂された事典とされる国宝「翰苑」。道真公の手に成る直筆文書も印象的です。
続いて、天満宮の敷地のもっとも端にある九州国立博物館へと歩みを進めましょう。
九州国立博物館では、8世紀から12世紀にかけて、日本の玄関口でありアジアとの架け橋となった太宰府の歴史遺産が、魅力的な展示によって紹介されています。博物館の外観を成すのはモダンなガラス構造体で、歴史の名残が息づく太宰府の街並みと素晴らしい対比を描き出しています。陶磁器や彫刻、仏教美術、風景画、写本など、国宝や重要文化財を含む数多くの文化財を収蔵しています。
インタラクティブな展示が特徴の常設展は、示唆に富んだ内容で、アジアとの国際交流が何世紀にもわたって日本の文化を形作ってきた様子をわかりやすく紹介してくれます。4階で上映される「スーパーハイビジョンシアター」も見逃せません。1階には、遊びながら学べる無料スペースがあり、色彩豊かで体験型の展示や、アートと工作のアクティビティが行われているので、お子様も楽しめるでしょう。
かつて大宰府の政庁が置かれていた地であり、建築基礎が保存され、史跡公園として整備されています。8世紀初頭から12世紀初頭にかけて、政治と文化の中心的役割を担い、九州を統括した太宰府。日本の外交と防衛における最前線でもあり、大陸との経済的な結びつきを広く維持しました。政庁施設は941年の争乱によって焼亡しましたが、のちに再建され、11世紀後半まではその機能を果たしたとされています。
この遺跡を訪れればきっと、遥か昔、目の前に広がっていたであろう都の姿をありありと感じられるはずです。