太宰府駅から続く参道は、軽食やお茶を楽しめる飲食店や土産物店が軒を連ね、賑やかな雰囲気。神社として九州最大級の規模を誇る太宰府天満宮は、天神さまをお祀りする全国12000社の天満宮の総本宮としても知られています。美しい朱塗りの御本殿とそれを取り囲む神苑をはじめ、敷地内には宝物殿、お子様向けのだざいふ遊園地、九州国立博物館もあります。
太宰府天満宮に祀られているのは、9世紀の政治家で著名な学者でもあった菅原道真公。845年、学問で朝廷にお仕えする家柄に生まれた道真公は、若くして学者の最高位である文章博士(もんじょうはかせ)となりました。その後、右大臣にまで登り詰め日本の文化と政治のために尽くしましたが、901年、当時の政治を支配した藤原氏の政略によって位を剥奪。太宰府へと左遷され、903年にこの地で59年の生涯を終えました。
京都から追従した門弟の味酒安行(うまさけのやすゆき)が今の地に御遺骸を葬り、祠廟(しびょう)いわゆる御墓所を創建したのが太宰府天満宮の起源であり、1100年以上の歴史があります。桃山時代の豪壮華麗な様式を伝える現在の御本殿は1591年に再建されたもので、国の重要文化財に指定されています。
秀逸な才能と最後まで誠心を尽くした生涯を讃えられた道真公への崇敬は学者や政治家だけにとどまらず、禅宗の僧、寺小屋の子供たちなど幅広い層にまでおよび、文道の祖また至誠の神としての信仰が広がりました。現代においても学問・文化芸術・至誠・厄除けの神としても慕われ、国内外より多くの参拝者が訪れています。
道真公の佩刀(はいとう)や古文書など、数々の重要文化財が収蔵された宝物殿を訪れることなく、太宰府観光を終えることはできないでしょう。特に印象的な展示物は、世界に唯一残る10世紀の百科事典である国宝の「翰苑」(かんえん)。道真公直筆と伝わる書も展示され、道真公の御生涯をまとめた映像もご覧いただけます。
初春に訪れるなら、神苑の梅を見逃すことはできません。梅をこよなく愛し、梅を詠んだ和歌も遺した道真公を偲び、境内には約6,000本の梅の木が植えられています。御本殿に向かって右側に佇むのが、最も有名な飛梅(とびうめ)です。道真公が愛したこの梅の木には、道真公を慕って京の都から大宰府に飛んできたという伝説があります。
道真公がこの梅との別れの際に詠んだ和歌が残されています。
「東風(こち)ふかば
匂ひおこせよ
梅の花
主なしとて
春な忘れそ」
(東風と共に春が訪れたら、香しい匂いの花を咲かせておくれ、梅の木よ。私が都から遠く離れた大宰府に行ったからといって、春の訪れを忘れてはならないよ。)